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「慰安婦」報道名誉毀損訴訟、元『朝日』記者の請求棄却
東京地裁
中町広志|2019年7月22日11:12AM
【判決の根拠に説得力なし】
植村氏の記事の前文は「日中戦争や第二次大戦の際、『女子挺身隊』の名で戦場に連行され」と書いていた。一方、記事の本文では「だまされて慰安婦にされた」とも書いた。ここに判決文が言及した部分は、記事の前文について、
〈原告が意識的に言葉を選択して記載したものであり、原告は、意識的に、金学順を日本軍(又は日本の政府関係機関)により戦場に強制連行された従軍慰安婦として紹介したものと認めるのが相当である。すなわち、原告は、意図的に、事実と異なる記事を書いたことが認められ、裁判所認定摘示事実3は、その重要な部分について真実性の証明があるといえる〉
というのである。
「真実性」は「真実相当性」「公共の利害」「公益目的」とともに名誉毀損訴訟で被告を免責するために必要とされる条件だ。このうち「真実性」「真実相当性」には確かな論理と根拠による説得力が求められる。特に「真実性」は「真実相当性」よりも積極的な判断だから一層の厳密さが必要である。
だが判決が挙げた根拠に説得力はない。それらを具体的に示すと▽『朝日新聞』は当時植村氏の記事の前後に強制連行を供述した吉田清治証言を多数掲載している。
▽植村氏は「金学順さんはだまされて慰安婦にさせられた」と供述。
▽新聞記者は記事中の言葉の選択には細心の注意を払うであろう。 などというものだが、これらについて植村氏は提訴以来一度もぶれることなく、こう主張してきた。▽挺身隊は当時、韓国では「慰安婦」をさす呼称だった。
▽「挺身隊の名で連行」との表現は当時、日本のどの新聞も書いた。
▽金さん自身がその後、「挺身隊だった」「連れて行かれた」「慰安婦にさせられた」と証言している。
すべて西岡氏には不都合な真実だが、裁判所は真摯に読み取ろうとしなかった。
(中町広志・フリー、2019年7月5日号)