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日本が32年ぶりの商業捕鯨再開で失うもの
井田徹治|2019年7月26日5:36PM
【市場ではご祝儀相場もなし 業者からはため息も】
北大西洋でのクジラの資源管理を行なう国際機関として、ノルウェーやアイスランドが1992年に設立した「北大西洋海産哺乳動物委員会」のような新機関創設も検討されているが、ロシア、韓国、中国など周辺国の反応は冷たく、これが実現する見通しはほとんどない。日本の再開商業捕鯨は、国際法との齟齬というリスクを抱えたまま続くことになる。
商業捕鯨が国内の鯨肉消費の姿を大きく変えるとも思えない。4日に行なわれた初競りでも、高級部位にはそこそこの値がついたが赤肉などはご祝儀相場と呼ぶにはほど遠い状況で、市場に並んだ赤身の肉は100グラム500~600円程度。賑わいを見せたのは釧路市、仙台市、釧路で水揚げされた鯨肉が運ばれた和歌山県太地町など関係地に限られた。
しかも、国際的な非難への配慮から水産庁は、ニタリクジラ150頭、ミンククジラ52頭、イワシクジラ25頭と捕獲枠を低めに設定した。比較的大型で最も数の多いニタリクジラは、くせが強く、過去に大量に売れ残ったことが知られている。ある都内の業者からは「供給される鯨肉の味が、これまでより悪いものになるんじゃないか」との懸念の声が出た。これまでも政府はあの手この手で鯨肉の消費拡大キャンペーンを続けてきたが、そのほとんどは失敗に終わっている。
AP通信は捕鯨再開を伝える記事の中で「四面楚歌で高額な政府による捕鯨プログラムを、政府の対面を保ちつつ、時の経過と嗜好の変化の中で徐々に亡き者にしてゆく試みだ」との見方を紹介している。筆者はこの見解を共有する。
(井田徹治・環境ジャーナリスト、2019年7月12日号)