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伊藤詩織さんが「性暴力」めぐり元TBS記者と法廷で4年ぶり対峙

小川たまか|2019年8月5日10:32AM

弁論終了後、報道陣や支援者の質問に答える伊藤詩織さん。(撮影/小川たまか)

ジャーナリストの伊藤詩織さんが2015年4月、就職の相談をしていた元TBS記者の山口敬之さんから性暴力を受けたとして1100万円の損害賠償を求めた裁判の口頭弁論が、7月8日に東京地裁で行なわれた。

同事件は刑事事件としては不起訴が確定したが、民事での闘いは続いている。なお、山口さんは今年2月、伊藤さん側に1億3000万円と謝罪広告を求めて反訴している。

両者の主張は真っ向から対立している。伊藤さんは、当日2軒目に入った寿司店でトイレに立ってからの記憶がないと主張。次に目が覚めた際、性暴力を受けている最中だったと訴える。

一方、山口さんは合意の上の性行為だったと主張する。酒に酔い嘔吐した伊藤さんが、その後、ベッドの上で自分から山口さんを誘ったのだという。「伊藤さんが傷ついておられることは間違いないだろう。自分から性行為を望んだことは一切ないが、深く反省している」とも述べた。

口頭弁論は、伊藤さんへの主尋問・反対尋問、山口さんへの主尋問・反対尋問の順で行なわれた。

苛烈を極めたのは伊藤さんへの被告側代理人弁護士からの反対尋問。友人女性に伊藤さんが相談した内容についての質問が続いた。

弁「友人女性は看護師だから、(レイプの際に体に傷ができたのなら)当然身体所見を見るのでは?」

伊藤(以下、伊)「仲の良い友人ですが、外出先で体を見せようとは思わない」

弁「外出先だったんですか。他の友人には『準強かんを受けたかもしれない』と話していますね。『かもしれない』ということは、自分でも確証が持てなかったのでは?」

伊「伝え方として、そういう言い方をしました」

【傍聴席がざわつく場面も】

傍聴した伊藤さんの支援者は「とにかく被告代理人の威圧的な態度・話し方に非常に驚きました」と感想を漏らす。その言動に傍聴席がざわつき、被告代理人が「傍聴席は黙ってください」と牽制する場面もあった。

原告側弁護団は6人が出廷。そのうち3人が交代で尋問を行なった。

被告側代理人が伊藤さんの著書『Black Box』(文藝春秋・17年10月刊)での記述を問いただす尋問が多かったのに対し、原告側代理人からも『月刊Hanada』(飛鳥新社)で山口さんが執筆した記事と証言を照らし合わせる場面があった。

弁「スラックスを脱がせたのは異臭があったから? 吐瀉物?」

山口(以下、山)「覚えていない」

弁「(ブラウスについては洗ったと証言しているが)スラックスは洗いましたか?」

山「洗っていない」

弁「異臭だけで脱げと言いますか?」

山「言います」

『月刊Hanada』17年12月号記事には「ブラウスとスラックスは、大量の吐瀉物で汚れていました」という記述がある。また、吐瀉物で汚れていたとされるブラウスは洗われていた。もしこの記述のようにスラックスも吐瀉物で汚れていたなら、なぜスラックスは洗われなかったのだろう。次のようなやり取りもあった。

弁「伊藤さんはなぜ早朝にひとりで帰ったのか」

山「それは本人に聞いてください」

弁「伊藤さんがシャワーを浴びたところは見ましたか?」

山「見ていない」

弁「嘔吐してそのまま帰った? 浴びていけばいいとあなたは言わなかった?」

山「それは本人の判断なので」

伊藤さんがひとりで帰った理由は、争われているように「性暴力があったから」だろう。ここで「本人に聞いてください」とは?

衝立などはなく、被告側と原告側が直接対決するかたちとなった法廷。6時間以上にわたった弁論は終始緊迫していた。終了後、伊藤さんは「今日が一番の山場だと思った。(つらかったのは)何度も被害時の様子を聞かれたこと」と話していた。

この後、9月頃までに両者が最終準備書面を用意することで合意。次回法廷は10月7日となる。

(小川たまか・ライター、2019年7月19日号)

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