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安田純平氏は日本に「拘束」中 
外務省の「出国禁止」に根拠なし

藤原亮司|2019年8月9日11:48AM

【ネットデマが政府裁量を後押し】

「国に迷惑をかけた」。これはフジテレビのバラエティ番組やSNSなどで、安田さんに投げかけられた言葉だ。パスポート発給拒否にも、SNSでは「当然だ」との意見が少なくない。「過去に何度も人質になった」「身代金で解放された」。だが実際は過去に人質になったこともなければ、複数のジャーナリストや報道機関が調べても身代金が支払われた形跡はない。それでも、ネットでばら撒かれたデマや憶測が「ひとつの言論」かのように扱われ、「政府の裁量」による措置を後押しする。

「帰国後も自由な状態に戻ることができないというのは、今も拘束が終わらないのだと感じる。その状態が続くことは常に心理的圧迫感がある」と、安田さんは語る。40カ月の拘束を耐え抜いた彼を、今度は政府がいまだ苦難の記憶から逃れられない状況に置いている。

「シリアには密入国で入った。それは世界中の記者も同じで特殊なことではない。一般的な紛争地取材の手法をかつて使ったことを理由に、『将来もやるかもしれない』と予防的処罰をしているとしたら、法の運用としておかしい」

安田さん同様にシリアで拘束され、政府によって解放されたとされるスペイン人ジャーナリストは帰国後1年を経たずしてトルコ経由でシリアを取材し、現在も戦争取材を続けている。同じくシリアで拘束された別のジャーナリストは解放後、「これほど自分がスペイン人で良かったと思ったことはない」と語った。彼らの国では、政府からも世論からも批判の声はほぼ聞こえない。

安田さんはジャーナリストであると同時に1人の犯罪被害者だ。武装集団に拘束され、長期間自由を奪われた状態からようやく解放された。だが帰国した祖国は犯罪被害者どころか犯罪者のように叩き、政府は「出国禁止」という形で彼を再び「拘束」し続ける。この国の民主主義は非常に危うい。

(藤原亮司・ ジャパンプレス、2019年7月19日号)

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