「面従腹背」の戦略投票を
西川伸一|2019年8月14日6:00PM
一方、6年前に民主党公認で当選した野党現職は、今回は立憲民主、国民民主、社民の各党から推薦を受けている。したがって6年前の生活の党の得票がそのままこの候補に移ると仮定しよう。それでも合計で33万1685票にしかならない。机上の機械的でごく甘めな計算でさえ、野党現職が当選するのはむずかしい。
そこで活用すべきは共産党の得票である。前回、前々回いずれも8万5000票以上を獲得したが死票になっている。これが野党現職に加われば、その当選可能性は大きく高まろう。野党統一候補擁立は2人区でも行なわれるべきだ。
共産党には広島選挙区の候補者を取り下げてほしい。輝かしい前例もある。55年2月の衆議院総選挙で、共産党は投票日前日までに39人の立候補者を辞退させた。こうして「民主的諸政党」の共倒れを防ぎ、改憲勢力による3分の2の議席獲得を阻止したのである(和田春樹『歴史としての野坂参三』260頁、平凡社)。
非現実的との冷笑が聞こえる。ならば広島選挙区の共産党支持者に切にお願いしたい。前川喜平氏の説く「面従腹背」で戦略投票をしてください!
(にしかわ しんいち・明治大学教授。2019年7月12日号)
【編注】参院選広島選挙区は与野党が改選2議席を分け合った。野党系の無所属現職の森本真治さん(46歳)がトップで再選を決め、自民党新人の河井案里さん(45歳)が2位で初当選を飾った。一報、自民党現職の溝手顕正さん(76歳)は6選を逃し、共産党新人の高見篤己さん(67歳)は届かなかった。