自由と権利を守る不断の努力
阿部岳|2019年8月15日12:00PM
前回参院選の投票日翌朝、私は米軍基地のゲート前に立ち尽くしていた。2016年7月11日、沖縄県東村高江。まだ全国で開票が続いていた午前6時、沖縄防衛局がヘリパッド建設の資材を基地内に運び込んだ。休止していた移設工事が突如、動き出したことを知り、慌てて駆け付けた。
前夜、沖縄選挙区では、基地の県内移設に反対する野党候補が安倍内閣の現職閣僚を大差で破っていた。不意打ちの工事再開は、沖縄の民意を即座に踏みつける暴挙だった。一方、全国では政権信任票が積み上がり、改憲勢力が発議要件である3分の2を超えた。溝は広がるばかりに映った。
「沖縄でこうやって民主主義が壊されているのは、本土にとっても対岸の火事ではない。あすはわが身になる」。ゲート前に抗議に来た男性は言った。
その後、高江で起きたこと。全国から応援の機動隊約500人が投入され、市民による非暴力の抵抗を実力で封じ込めた。
機動隊員は座り込みの市民をごぼう抜きした後も別の場所で取り囲んだまま、拘束を続けた。理由は「また座り込むかもしれないから」。戦前の治安維持法で悪名高い予防拘禁が21世紀によみがえった。
今回の参院選期間中、よく似た事態が札幌市や大津市に拡大した。安倍晋三首相の街頭演説に抗議の声を上げた人が警察官によって強制排除され、その後も行動の自由を奪われた。
札幌で「増税反対」「安倍やめろ」と訴えた女性とみられる匿名の日記がネットにある。「(警官に)確認しても『法律違反ではない』と言うし、それなのに平気で身体を抑えて物理的に外側に連れてこうとしてるのがやばいと思った」。