有権者の望みは社会保障と福祉
佐藤甲一|2019年8月17日7:00AM
7月4日に公示された参議院選挙も終盤に差し掛かっている。この間、偶然だが与野党2人の人気者の街頭演説に出くわしたが、そのいずれからも取り巻く有権者の熱気を感じることがなかった。安倍政権6年半の審判を下す大事な機会にもかかわらず、そこには有権者が今の政治を突き放したような空気すら感じる。
最初に遭遇したのは自民党の小泉進次郎衆院議員だ。同氏は5日に「小沢王国」と呼ばれる国民民主党の総合選挙対策本部長相談役に就いた小沢一郎氏の地元・岩手で、奥州市や盛岡市を回った。夕刻仕事終わりの社会人が行き交うJR盛岡駅前では街宣車の上で声を張り上げていたが、目についた有権者は100人もいただろうか。小沢氏の地元であることを値引いたとしても、これが小泉氏の演説会場かと思うほどの閑散ぶりだった。
一方、8日の昼過ぎにJR名古屋駅前では立憲民主党の蓮舫氏が演説していた。こちらは街宣車を使わずにドブ板選挙風のビールケース状の台で訴えていたが、大きな交差点の四隅にあたる歩道部分がいっぱいになる程度しか聴衆はいなかった。
報道機関各社の序盤中盤情勢を眺めると、概ね与党の堅調ぶりが伝わってくる。安倍晋三首相の悲願でもある憲法改正の発議に必要な3分の2の議席維持を確保するに必要な、改憲勢力で85議席前後獲得は難しいにしても、改選議席の過半数63議席は自民公明両党で優に越す勢いである。議席を確保すれば政権のすべてが信任されたと都合よく曲解し、議会での議論を蔑ろにする安倍政権の常套手段からすれば、改選過半数を与えることは同じ暴走を続けることにほかならず、極めて由々しきしだいと言わなければならない。