日韓、「貿易政策による報復」は禁じ手
佐々木実|2019年8月18日7:00AM
深刻なのは、本来なら憂慮を示すべき経済界から、貿易政策による報復という禁じ手を評価する声があがったことだ。輸出規制強化の方針が発表された日、日本商工会議所の三村明夫会頭は「(悪化している)日韓関係を解決する一つの提案を出したのではないか」と政府の姿勢を評価した。三村氏は韓国大法院の判決で元徴用工に賠償を支払うよう命じられた日本製鉄(旧新日鉄住金)の名誉会長で、いわば「報復」の当事者的立場にいる。
経済同友会の桜田謙悟代表幹事も会見で、「今回の措置は政府の一貫したメッセージ。韓国政府も真摯に受け止めて、早く経済関係が正常化することを期待している」と「報復措置としての貿易政策」を承認しているかのような発言をしている。
『ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)』は「安倍首相はライバル国の中核産業を経済的に罰するトランプ(大統領)流の手法を手本にした」と解説した。けれども、近年のこじれにこじれている日韓関係を鑑みれば、貿易政策による報復という禁じ手がかりに「効力」を発揮して韓国経済を混乱に陥れれば、米中貿易摩擦の比ではない深刻な事態を招くことは確実だろう。
(ささき みのる・ジャーナリスト。2019年7月19日号)