立候補の供託金は合憲か
宇都宮健児|2019年8月24日2:54PM
300万円の供託金を用意できなかったために2014年の衆議院選挙に立候補できなかった男性が、立候補の自由を奪う選挙供託金制度は立候補の自由を保障した憲法15条1項や国会議員の資格は「財産又は収入によつて差別してはならない」と定めた憲法44条但書に違反するとして、国に損害賠償を求めていた選挙供託金違憲訴訟の判決言い渡しが、5月24日東京地方裁判所(杜下弘記裁判長)で行なわれた。
東京地裁判決は、300万円の供託金が「立候補しようとする者に対して無視できない萎縮的効果をもたらすものということができ、立候補の自由に対する事実上の制約となっている」ということは認めつつも、泡沫候補者や売名候補者の立候補を抑制し候補者の濫立を防止するという選挙供託金制度の立法目的は正当なものであるとし、選挙制度に関する国会の裁量権を広く認めた上で、300万円の供託金は合憲と判断して原告の訴えを棄却した。
わが国の選挙供託金制度は、1925年に成立したいわゆる「普通選挙法」から始まっている。この年に成立した法律の中には、あの悪名高き「治安維持法」がある。
普通選挙法で極めて高額な選挙供託金制度が導入された表向きの理由は、泡沫候補者または売名候補者の立候補を抑制し公正な選挙を実現するためと説明されてきたが、実際は無産政党の議会進出を抑制することが真の目的であった。そもそも泡沫候補者や売名候補者を排除するか否かは、国民主権の民主主義国家であれば有権者の判断に委ねられるべきなのである。