立候補の供託金は合憲か
宇都宮健児|2019年8月24日2:54PM
訴訟提起後、弁護団が諸外国の選挙供託金制度について調査したところ、OECD(経済協力開発機構)加盟35カ国中、23カ国が選挙供託金制度がなく供託金ゼロで立候補できることが判明した。また、選挙供託金制度が存在する12カ国に関しても、大半の国の供託金は10万円以下であり、日本の供託金は選挙供託金制度がある国の中でも突出して高いということがわかった。
さらに、諸外国の選挙供託金制度について調査する過程で、いくつかの国の裁判所で供託金の違憲判決が出されていることもわかった。
供託金の違憲判決を出した韓国憲法裁判所、アイルランド高等法院、カナダ・アルバータ州の裁判所などの判決に共通しているのは、あるべき議会制民主主義や少数者の基本的人権保障の観点から選挙供託金制度の問題点について徹底した考察が行なわれていることである。今回の東京地裁の判決では、選挙供託金制度の問題点についてこのようなあるべき議会制民主主義や少数者の基本的人権保障の観点からの考察がまったく行なわれていない。
国民主権の民主主義国家においては、権力の濫用を防ぎ国民・市民の権利や自由を守るために三権分立の体制がとられている。そして三権分立体制下における司法の本来的役割は、国民・市民の基本的人権を守るという観点から立法や行政をチェックすることである。国会の裁量権を広く認めた今回の東京地裁判決は、自ら司法本来の役割を放棄した不当判決であると言わねばならない。
(うつのみや けんじ・弁護士、2019年7月19日号)