10年で変わった防災施策
防災にもジェンダー視点を
宮本有紀|2019年9月8日12:52PM
2019年度男女共同参画推進フォーラムが埼玉県の国立女性教育会館で開催され、8月30日に行なわれたワークショップ「男女共同参画の視点に立った自治体の防災・減災政策」は、平日ながら多数が参加。佐賀や岩手など被災地からの参加も見られた。
経済学者の大沢真理・東京大学名誉教授は、育児や介護などをしている女性や障がい者などは避難が遅れがちで、所得による被災格差もあるとして、「被害は“平等”ではない。年齢、性別、育児や介護の責任、障がいの有無、社会階層などにより偏る」と指摘する。
「男女共同参画と災害・復興ネットワーク」代表の堂本暁子氏は、「男性だけが避難所を運営すると、更衣室や授乳室がなかったり、生理用品を高齢女性にも配布するなどの画一的な対応になったりした。セクハラやDVも起きていた」と述べ、全国知事会が08年に全自治体を対象に実施した「女性・地域住民からみた防災施策のあり方に関する調査」と、大沢氏を代表とする調査チームが実施した「2017年度女性・地域住民から見た防災・災害リスク削減策に関する調査」の結果を比較し、約10年でどう変わったのかを検証した。
避難所に設置する設備(市区町村)では、08年に7・7%だった更衣室が17年は53・1%に、授乳室は5・9%が48・2%になるなど個人への配慮が進んだことがわかる。また、08年には少なかったおしりふきや離乳食、アレルギー対応食などの常時備蓄を増やす自治体もでてきている。堂本氏は「女性が具体的に要求したところから変わっている」と話し、意思決定の場に女性や多様な背景を持つ人たちの参画が必要なことが確認された。
岩手県からの参加者が「自治体職員にジェンダー感覚がないと難しい。防災に男女共同参画の視点が必要ということをどう進めていくかが課題」と実状を報告すると堂本氏は「岩手だけでなくオールジャパンの問題」と、多くの地域で意識改革が必要であると指摘。「多様な人が一緒に議論するのが民主主義。それをしないと地域は発展しない」と述べた。
(宮本有紀・編集部、2019年9月6日号)