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「表現の不自由展・その後」仮処分申し立てのゆくえ 展示再開へ向けて「壁を橋に」

片岡伸行|2019年9月27日11:56AM

抗議の約半数が「平和の少女像」に集中した。写真はミニチュア。(撮影/片岡伸行)

【中止判断「認められない」】

その仮処分について中谷弁護士は「請求の趣旨は2点。展示会場入り口の壁を撤去し、展示を再開すること」とし、「業務委託契約書によると、中止できる理由は二つ。災害発生と当事者が違法行為を犯した場合で、これ以外の中止の理由は認められない」と説明。「中止判断は、明らかに差し迫った危険の発生が予見され、警察の警備などによっても混乱を防止することができない特別な事情がある場合に限られると複数の判例が示している。今回、緊急の差し迫った危険性はない」と述べた。

その「複数の判例」の一つが「ニコンサロン事件」判決(15年12月25日・東京地裁)だ。今回の申し立てに名を連ねる11人の弁護士のうち、地元名古屋以外から加わっているのが写真家・安世鴻さんを原告としたニコン写真展中止事件を担当した李春煕弁護士。李弁護士は集会の場でこう述べた。

「(二つの事件が)似ているのは中止の理由。電話とメールでの抗議によって当事者と協議することなく中止された。しかし、判決は〈一方的な中止は表現活動の機会を失わせることになり、回避できない重大な危険がある場合にのみ認められる〉とし、当事者が誠実に協議し、互いに協力し、警察当局に協力を求めるなどして必要な措置を講じるべき、などと判断した。これは『あいちトリエンナーレ』にも言えること」

仮処分の審尋は9月20日と27日に非公開で行なわれるが、「裁判所は前向きな姿勢。会期(10月14日)も迫っているので、和解での解決か仮処分決定によって早期の再開をめざしたい」と中谷弁護士は結んだ。

実行委はまた、前述の検証委員会が9月10日から出品作家に配付し市民に公開している「アンケート」について問題視。「展示の趣旨や作品の選定などについてどう思いますか? などの設問がある。これ自体が出品作家への思想調査であり、表現の自由を害する悪質な調査だ」として抗議と撤回要求を出したことを明らかにした。

(片岡伸行・記者、2019年9月27日号)

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