安倍政権、次期年金制度改革案は国民の「自助頼り」?
吉田啓志|2019年10月1日3:25PM
政府は公的年金の財政検証の公表を受け、次期年金制度の改革に着手した。検証によると年金の大幅カットは避けられず、どうにか上積みできないかと模索している。しかし、負担増につながる案には早くも反発が出ている。難航した挙句、老後も働き、受給開始年齢を遅らせることで年金額を増やすという「自助頼み」の見直しがメインとなりかねない状況だ。
「これでは日本の年金に未来はないですよ」。シンクタンクの年金専門家はうんざり顔で言った。9月2日、東京・全国都市会館での厚生労働省「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」の議論を聞いてのことだ。
懇談会の議題は、厚生年金を非正規雇用で働く人たちにも広げるかどうか。連合の代表らが賛成する中、日本商工会議所の荒井恒一理事は「社会保障のためというのは理解できるが、企業の負担には限界がある」と慎重論を説いた。労使折半の保険料を念頭に負担増を嫌った発言で、全国商工会連合会なども後ろ向きだった。
財政検証の公表は7月の参院選をにらみ、8月27日にずれ込んだ。モデル世帯(40年間会社勤めをした夫と専業主婦の妻)の厚生年金の給付水準(現役男性の平均手取り収入に対する年金額の割合、2019年度61・7%)は徐々に減らされ、28年後に2割減の50・8%で下げ止まるとの内容だ。
モデル世帯の給付水準について、国は法律に「50%を維持」と明記している。5年に一度、この約束を守れるか否かを点検するのが財政検証で、50・8%ならギリギリセーフだ。それでも、これは実質経済成長率が0・4%増で推移する「標準」ケース。経済が悪化すれば30~40%台に落ち込む。約束違反を危ぶむ厚労省は「オプション試算」として検証結果に複数の給付底上げ策を添え、筆頭に厚生年金の適用拡大を掲げた。