教育委員への高額ハイヤー輸送発覚
都教委の説明は
永野厚男|2019年10月15日2:08PM
東京都教育委員会が月2回程度開催する定例会などの会議日に、非常勤の教育委員を高額ハイヤーで輸送してきた、さらにその支出が2016年11月以降ゼロになった事実が9月11日、情報開示請求した都民への取材でわかった。
中村正彦都教育長(当時)は07年4月11日に決定した文書で、その公費支出を以下のように正当化している。すなわち“つくる会”系社会科教科書の採択や“君が代”不起立教員処分などで都教委は「社会的影響力の大きな判断を行っている」ため、教育委員の「自宅から都庁舎までの行程」等で「様々な団体や不特定多数の者が直接、委員に抗議や批判を目的として接触し、周囲を取り囲むような事態が生じることが想定される」。だから会議開催日の「委員の輸送」は「自宅その他の委員が指定する場所」と「当該会議の開催場所」との往復を「原則として、教育庁(注、都教委)の雇上車により行うものとする」としている。
同文書は、都教委定例会が13年6月27日、“君が代”強制問題などを記述した実教出版日本史教科書の、都立高校等での選定禁止を議決した事案を追及した増田都子・元千代田区立中教諭が教育委員の交通費を開示請求し、発覚した。
都教育委員の主な職務は冒頭に挙げた会議出席や年数回の学校訪問等だけで月額報酬42万9000円と高額だが、都教委が東都ハイヤーと交わした「運搬請負契約書」は13年度に297万円超を計上。15年5月21日には月額報酬52万3000円の教育委員長だった木村孟氏が同日だけで13万円以上も乗車し、遠藤勝裕委員も徒歩なら15分の西武新宿駅から都庁まで8820円かけて乗車していた。
こういう税金のムダ遣いをやめさせたのは高嶋伸欣琉球大学名誉教授ら都民124人が、敗訴はしたが損害賠償訴訟を続けた成果といえる。ただ都教委は前掲文書決定を取り消しておらず、都民が監視を怠ると復活の危険性がある。
(永野厚男・教育ジャーナリスト、2019年9月20日号)