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個人情報流出多発のマイナンバー制度に合憲判決
横浜地裁
小石勝朗|2019年10月21日8:55PM
【他にも全国7地裁で係争中 社会に問題をどう訴えるか】
「では、なぜマイナンバー法は個人番号を厳しく管理するよう求めているのか。マイナンバーにさまざまな個人情報が結び付けられ、漏れた時の影響が大きいからではないのか。本質をあえて無視して制度を正当化しようとしたために、論理的に破綻している」
原告弁護団代表の小賀坂徹弁護士は、判決を厳しく批判した。
原告代表の宮崎俊郎さんも「『マイナンバーを見られても個人情報は盗まれない』と最近言い出した政府に媚びる内容だ。個人情報保護委員会の機能不全にも触れていない」と語気を強めた。
訴訟のもう一つの大きな焦点は、プライバシー権の範囲をどこまで認めるかだった。原告弁護団は、自分の個人情報が収集・保存・利用・提供される場合に、事前に目的を示され同意するかどうか決められる「自己情報コントロール権」を主張していた。
しかし判決は、2008年に最高裁が示した「個人情報をみだりに第三者に開示・公表されない自由」を踏襲。「収集、保有、管理、利用などの過程」がそこに含まれるとしたが、自己情報コントロール権には直接言及しなかった。
判決に救いがあるとすれば、漏洩の多発を受け、国に対し「制度の運用に伴う弊害防止に向けた不断の検討を継続し、必要に応じて改善を重ねていくことが望まれる」と一応のクギを刺していることだろう。原告団と弁護団は声明で「制度の抜本的な見直しが迫られている」と指摘した。
一方、内閣府番号制度担当室の高木有生参事官は「マイナンバー制度について国の主張が認められたと承知している。引き続き個人情報の保護に十分に留意しながら、制度の利用と活用を推進していく」とコメントした。
同様の違憲訴訟は、ほかに東京、大阪など7つの地裁で係争中。名古屋地裁で結審し、東京地裁でも今年12月に審理を終える予定だ。
今回の判決は、マイナンバーが漏洩すると危険な理由が社会に認識されていないことを如実に示した。マスコミが漏洩事案をほとんど報じないのも同じ原因とみられる。制度の根源的な問題点をいかに広く知らせていくか、反対運動にとっても大きなテーマだ。
(小石勝朗・ジャーナリスト、2019年10月4日号)
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