東電、東海第二原発再稼働に資金支援表明
東京地裁へ書面
小石勝朗|2019年10月24日3:27PM
意向を示しただけで決定はしていない。東海第二原子力発電所(茨城県)の再稼働をめぐり、運営する日本原子力発電(原電)へ安全対策工事費の支援を表明したことについて、東京電力ホールディングスがそんな主張を展開している。原子力規制委員会は原電の経営状態を懸念して資金調達計画の提示を再稼働の条件にした経緯があり、整合性が問われそうだ。
東電の脱原発株主が小早川智明社長ら代表執行役を相手取り、原電への支援は「東電の利益を害する」として東京地裁に差し止めを求めた訴訟で、東電が9月12日の口頭弁論に準備書面を提出した。
その中で東電は、昨年3月の取締役会で、同原発からの受電比率(8割)を上限に「資金支援をする意向がある」と表明する旨が報告されたことは認めた。しかし、取締役会が「資金的協力を決定したことはない」と強調。表明が「法的拘束力のある約諾ではない」とする文書を原電に渡したという。
支援するかどうかは現在も「総合的に精査検討している」と説明し、判断の要素として東海第二から電力供給を受ける経済合理性などを挙げた。資金援助をしないと廃炉になる可能性があることにも触れ、その場合の東電への「経済的、社会的影響も考慮しなければならない」との論理を記した。
また、周辺自治体の反対が強く再稼働は見通せないとの原告の指摘に対して「現時点で地元自治体の理解が得られないと解すべき特段の事情は存在しない」と反論。根拠として、那珂市の新市長が前任者の「再稼働反対」を白紙に戻すと表明したことなどを示した。
同原発の再稼働に必要な安全対策工事費は1740億円と見積もられるが、3000億円に膨らむとも報じられる。「支援する場合も合理性が認められる方法・金額で実施する」と主張し請求棄却を求める東電に対し、原告弁護団の河合弘之弁護士は「支援がなされれば経営陣に賠償を求める株主代表訴訟を起こす」と語る。
(小石勝朗・ジャーナリスト、2019年9月27日号)