松井大阪市長の「放射能汚染水」大阪湾放出発言に市民らが抗議
黒部麻子|2019年10月24日3:43PM
東京電力福島第一原発のタンクにたまり続ける汚染水問題。大阪市の松井一郎市長(日本維新の会代表)が9月17日、大阪湾への放出もありうる旨の発言をしたことから反対の声が相次いでいる。翌18日には大阪府漁業協同組合連合会が緊急抗議文を提出。市民による抗議活動も行なわれ、近隣県知事からは異論が出ている。
20日にはジャーナリストの木下黄太氏ら市民団体「大阪湾に放射能汚染水を放出させない会」が大阪市長に申し入れと記者会見を行なった。フェイスブックで急遽立ち上がったグループ。1日で200人ほどが集まったという(10月1日正午現在314人)。
一部報道では、処理済汚染水の海洋放出は安全性に問題はなく、懸念されるのは「風評被害」のみであるかのような論調も見られる。しかし同会は、大阪湾は閉鎖水系的性格が強く、汚染が湾内で長く滞留する可能性や、外洋ではなく瀬戸内海などの内海へ汚染が広がる可能性を指摘。また、山崎秀夫・元近畿大学教授による意見書も付し、トリチウム以外の放射性物質を除去できるはずの多核種除去設備(ALPS)で処理した水の中に、セシウム137やストロンチウム90などが含まれていること、処理水の放射能濃度にばらつきが大きいことから、ALPSが健全に稼働していない可能性、またトリチウムの内部被ばくの危険性などを指摘した。
29日には同会が大阪市内で緊急集会を開き、およそ50人が参加したという。木下氏はこう話す。
「維新側は『福島のため』と言うが、福島から神戸へ避難してきた参加者から、集会でこんな発言があった。『放射能から逃げてきて、ようやく関西で生活が成り立っているというのに、また放射能に追われるのは耐えられない』と」
大阪湾への放出は、輸送コスト等の面から非現実的と見る向きもあるが、福島視察の予定が報じられるなど、維新側は前のめりだ。今後の動きを注視していきたい。
(黒部麻子・フリーライター、2019年10月4日号)