大学入試の英語民間テスト導入に教員や高校生ら抗議
「受験生の目線ゼロ」と批判
2019年10月28日6:18PM
2020年度から新たに導入される「大学入学共通テスト」では、英語のみ外部の民間テストが並行して利用される。これに対して「受験生の間に不公平が生じる」などと訴える大学教員や高校生らが4日午後、国立大学協会(国大協、東京都千代田区)前で抗議を行ない、「大学入試改革は中止しろ」「学生を実験台にするな」などと書かれたプラカードを持った人ら約50人が集まった。
英語民間テストの利用は「読む・聞く・書く・話す」の評価が目的。実用英語技能検定(英検)やGTECなど、民間6団体が実施する7種類の試験が導入される。受験生は来年4月から12月の間に民間テストを受験。成績は実施団体から大学入試センターが集約し、各大学に提供するしくみだ。
ところが導入をめぐっては「各テストで測る能力は異なり、相互に成績は比較できない」「各テストの受験料が最低でも5000円台から必要。受験機会の均等が保たれていない」などと、多くの問題点が指摘されている。
抗議に参加した東京大学の阿部公彦教授は「民間試験自体ではなく、導入の制度設計が悪い」と指摘。続けて、京都工芸繊維大学で応用言語学が専門の羽藤由美教授が「大学入試改革が受験生と対話しておらず、受験生の目線を欠いている。『英語は話す力が大事』と言いながら、民間テスト利用の科学的根拠を大学や国大協は説明できていない。説明できないならやめるべきだ」と批判した。
同じく参加した都内高校2年の男子生徒は「民間テストを実施する団体が対策講座もやっている」と“マッチポンプ”ぶりを問題視。「大学が受験生を主体的に選抜するのが入試の目的。民間テストは学生を選抜する目的では作られていない。導入しないで」と話した。抗議を呼びかけた元私立高校教員の田中真美さんも「民間テスト利用が密室で決められ、しかも公平公正さを欠いている」と語った。
(本誌編集部、2019年10月11日号)