製薬業界が根治薬求め開発競争
認知症克服への遠い道のり
吉田啓志|2019年10月29日2:17PM
認知症の6割程度を占めるアルツハイマー型認知症(AD)。根治薬の開発に成功すれば莫大な利益を得られるとあって、世界中の製薬会社がしのぎを削ってきた。だがハードルは高く、治験は失敗続きだ。「国民病」「人類最後の敵」とも言われるADも昨今は薬の開発中止が相次ぎ、製薬業界内には諦めムードも流れる。
9月13日、国内製薬大手、エーザイ(本社・東京)は、米企業と共同開発中だったAD治療薬候補「エレンベセスタット」の開発中止を発表した。治験は1~3相の三段階で行なわれる。同候補薬はすでに製品化前の最終段階、3相へと進んでいた。それが土壇場に来て有効性や安全性を審査する第三者委員会に「最終的に利益がリスクを上回ることはない」と勧告され、中止に追い込まれた。
「やっぱりね」。エーザイの強い危機感とは裏腹に、関係業界にはそんな空気が流れた。今年3月、同社は「根治薬の第1号になる」との期待を集めていた認知症薬候補「アデュカヌマブ」の開発を中止している。当時、同社の株価はストップ水準安となる前日比17%安、7565円まで急落。6月の株主総会時、内藤晴夫CEO(最高経営責任者)は1600人超の株主を前に深々と頭を下げざるを得なかったが、今回は織り込み済みなのか、株価にも大きな変動はなかった。