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性虐待事件の控訴審開始
被害者が救われる社会へ

宮本有紀|2019年11月1日7:00AM

「相手の女性が性行為に同意しているとの〈誤信〉は、性犯罪の故意がなかったこととイコールではない。それは加害者の〈勝手な思い込み〉と言うべき」と話す園田寿氏。(撮影/宮本有紀)

刑法学者の園田寿・甲南大学法科大学院教授は一審判決について「17年に刑法が改正され、強かん罪(強制性交等罪)の法定刑が3年から5年に重くなったことでより悪質なケースがあてはまると解釈したのではないかと思う。判決は〈性交に応じるほかに選択肢が一切ない状態〉を抗拒不能の条件にしたが、これまでの抗拒不能を認めた判決と比べてかなりハードルが高い」と指摘。そのうえで「抗拒不能に基づく法定刑の基本類型を3年に戻し、暴行・脅迫があった場合には加重する形にしたらどうか。また、性交の同意があったと被告側が主張する場合は、客観的に相当な根拠があるのかどうかを検討すべき」と提案した。

同じく刑事法が専門の後藤弘子・千葉大学大学院教授は「刑事裁判が性被害者のリアリティを反映できない理由の一つは刑事司法が男性化されているから。刑法は1907年に成立し立法者に女性はいない。男性が性をコントロールすべきとする考え方が前提だった。今も被疑者や弁護士は『強かん神話』(嫌なら逃げたはず、被害者は泣き暮らすなど)に基づいた主張をするし、ジェンダー・バイアスは、捜査や裁判に反映されやすい」と司法をとりまくジェンダー不平等を指摘。

社会学者の伊藤公雄・京都産業大学客員教授も「加害者には男性が多く、警察も検察も弁護士も裁判官も男性が多い。報じるメディアも男性支配。性暴力をめぐる配置図は共犯的男性性の中で出来上がっている。性暴力は性欲より支配欲という議論もある。支配と依存の構造から男性が抜けだし、性暴力への感受性を研ぎ澄ますためにジェンダー問題は切り離せない」と話した。

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