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性被害の訴え阻む「時効」の壁 
性被害と気づくまで20年かかった

武馬怜子|2019年11月6日7:13PM

【残る「除斥期間」の壁】

来年2020年4月施行の民法改正により、「除斥期間」はなくなり、「時効」と明文化されることになる。それは性暴力被害者にとって利点となり得るのだろうか。東京きぼう法律事務所の寺町東子弁護士は「『除斥期間』は不法行為から20年の期間が経過すると自動的に権利が消滅する、という考え方で、中断もなければ当事者の意思に委ねる援用という概念もないため、事案に応じた被害救済が困難でした。それに対し『時効』は当事者が援用しなければ権利消滅しませんし、援用しても信義則違反などの法理により、時効の援用を制限することも可能で、より柔軟に当事者間の公平を図ることができます」と説明する。

ただし問題もある。寺町氏は続ける。「施行日時点で20年を経過していないケースについてだけ改正法が適用されます。施行日前に20年を経過している事件は『除斥期間』で消滅している、遡っての『時効』の適用はしない」。

ということは、多くの性被害のケースはまだこの「除斥期間」と向き合う必要があるのだ。

2017年6月、刑法性犯罪規定は110年ぶりに改正された(43ページ囲み参照)。「強姦罪」が「強制性交等罪」となり、女性だけではなく、男性も被害者と認められ、親告罪から非親告罪となるなど評価できる点もある。

一方で多くの課題も残った。子どもの頃に受けた性被害を大人になって気づき、告訴しようにも、公訴時効(注2)の壁は依然立ちはだかるし、性交同意年齢は13歳のままだ。また、監護者による18歳未満への性犯罪は新設されたが、教員やスポーツ指導者などはそれに含まれなかった。

来年、刑法見直しのための議論が始まるが、被害実態に即した改正が行なわれることを強く望む。

(注1)性暴力と、性暴力に対する不当判決に抗議し、性暴力のない社会を目指すアクション。2019年3月、娘に性交を強要していた父親や、抵抗できない状態の女性に性交した男性が無罪となる判決が続き、刑法や裁判のあり方に批判が高まったことから同年4月11日に始まった。花を持ったり、花柄を身につけ、抗議の意思や被害者への共感を示す。毎月11日に全国各地で行なわれている。
(注2)刑事訴訟法250条「公訴時効期間」における「強制性交等罪」の刑事事件手続きの「時効」は10年(強制わいせつ罪は7年)。

(武馬怜子・フォトジャーナリスト、2019年10月11日号)

 

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