滋賀県元看護助手、再審無罪へ
大津地検が「白旗」
粟野仁雄|2019年11月20日6:12PM
2003年、滋賀県東近江市の湖東記念病院で男性入院患者(当時72歳)の人工呼吸器を外して殺したとして逮捕され、05年に殺人罪で懲役12年が確定し服役、求めていた再審が大阪高裁と最高裁で認められた元看護助手の西山美香さん(39歳)の無罪が事実上確定した。大津地検は10月18日付の大津地裁と弁護団宛て書面で(1)新たな有罪立証をしない(2)西山さんが捜査段階で自白した調書を裁判所が証拠排除しても異議は申し立てない(3)再審公判は一回で結審し年度内判決を求める、とした。自白の信用性を否定した大阪高裁の再審開始理由を踏襲した形だ。
10月23日に会見した西山さんは「びっくりした。年老いた両親が一番喜んでくれる。嬉しい」と喜んだが「今までこうしてきた(検察の特別抗告など)のは何なんだと思う」と改めて怒りを見せた。 井戸謙一主任弁護人は「無罪判決はほぼ確実になった。違法な取り調べがあったとみられ、自白に至った経緯を明らかにしたい」と話した。
西山さんは滋賀県警刑事の巧みな優しい言葉に恋慕の情を抱き、それを利用した刑事に言われるままに供述した。当初警察は呼吸器が外れたことを知らせるアラームが鳴ったのに放置したと傷害致死罪の疑いで同僚の正看護師を聴取していたが、任意聴取されていた西山さんが急に「自分が呼吸器チューブを外した」と“自供”した。
西山さんは後に「彼女(同僚)は正看護師でシングルマザーだから有罪になったら大変。私は気楽な独身の助手だから自分が殺したことにすればいいと思った」と話している。弁護団は「患者が不整脈で自然死した可能性が高い」と医師の意見書を提出し再審開始が決定された。“自白”は「捜査官に迎合した可能性が高い」とした。
再審公判で検察は「有罪」を主張するとみられる。それなら堂々と争えばいい。それをしないのは卑劣な刑事が証人喚問されることを恐れたからか。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、2019年11月1日号)