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川崎しんゆり映画祭、『主戦場』一転上映
問題の核心は川崎市の圧力
植松青児|2019年11月22日4:33PM
28日には東風が声明を発表し、「8月29日に中山代表を含む4名の映画祭スタッフから受けた経緯の説明」は「川崎市当局からの『主戦場』上映に対する『懸念』は、(1)明示的でない言い回しで(2)メールや文書などの証拠が残らないかたちで(3)しかし、かなりの強さをもって示されている、そのため映画祭も対応に苦慮しているということ、そして予算のおよそ半分を負担している川崎市との関係悪化は映画祭の存続に関わることだという認識を話して」いたことを明らかにする。
さらに、30日のオープンマイクで配布された「今までの経緯と状況の確認」という資料には、8月5日に「『川崎市より「主戦場」上映に関して、共催事業内で行うことは難しい』と電話を受ける」と書かれていた。この資料は、中山代表以外の映画祭スタッフによって作成されたものだった。
そして中山代表も、安全上の懸念だけではなく、映画祭予算の半分近くを助成する川崎市との関係悪化を憂慮したことも上映中止の理由だったことを認めた。
以上、明らかになったことは、川崎市は単なる「懸念」だけではなく「(『主戦場』上映は)共催事業という枠内では難しい」という「意思」を主催NPOに伝えた事実であり、そして主催NPOの中山代表らが市の共催取り消し・助成の中止を恐れたことである。言い換えれば、川崎市は主催NPOに「助成が中止されるかもしれない」という恐怖を与えたのだ。
川崎市・市民文化振興室の山崎浩室長は11月1日付『神奈川新聞』記事の中で「上映作品を選定するのは映画祭の側。市はこれまでも選定に意見を言ったことはないし、今後も言うことはない」と述べている。しかし、それは主催NPOなどが明かした事実関係との整合性を欠いている。
ほぼ同時期、三重県伊勢市の伊勢市美術展でも、同展運営委員・花井利彦氏のポスター作品(平和の少女像がコラージュで入っている)に対して、伊勢市が展示不可措置を取った。こちらも「安全上の理由」だという。表現の自由をめぐる状況は急激に悪化している。このような傾向を食い止めるためにも、行政の責任追及が急務だ。
(植松青児・編集部、2019年11月8日号)