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米ワシントン近郊に「少女像」設置
2019年11月25日6:50PM
今回設置された「少女像」も、3年もの間、倉庫に置かれていたが、ある地権者が設置場所を提供したことで日の目を見ることとなった。本来はワシントンD.C.内への設置を目指していたので、今回の設置場所はベストではなかったと実行委共同代表で、WCCWの代表でもあるジュンシル・リーさんはいう。
だが、除幕式には数多くの韓国や日本のメディアが集まり、郊外の私有地への設置とは思えないほどの報道があった。
そして、ワシントン地域のみならず、フロリダ、テキサスやシカゴなど他地域からも運動関係者が駆けつけた。韓国からは、元「慰安婦」で平和運動家の吉元玉(キル・ウォノク)さんや、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」の尹美香(ユン・ミヒャン)理事長も参加。吉さんは除幕されると満面の笑みを浮かべ、像に歩み寄り、隣の椅子に座った。若い世代の参加も目立ち、地元のコリアン系米国人が歌、音楽や踊りなどのパフォーマンスも行なった。
式にはこのほか、バージニア州のジャスティン・フェアファックス副知事をはじめ、州議会議員や郡政府関係者らも出席。同州のラルフ・ノーサム知事や、マイク・ホンダ元連邦下院議員も祝辞を寄せた。私有地への像の設置であっても幹線道路沿いの目立つ場所であることに加え、特派員が多く、政治家との繋がりも強いワシントンという土地柄を最大限に生かした除幕式だった。
1990年代初頭から「慰安婦」問題に関わり続け、下院決議121号(日本政府に「慰安婦」への謝罪を求めるもの、2007年)を通すなどさまざまな成果を上げてきたワシントンの市民運動の歴史も反映されていた。加えて、私有地の像設置にも圧力をかける日本政府の昨今の動きが、逆に私有地への設置にも注目を集めさせ、大きな効果を持った側面もあるだろう。前出のリー共同代表によれば、今後もワシントンD.C.で像の設置を目指していくという。
日本のメディアでは、像の設置が日韓関係にさらなる悪影響を与えかねないなどパターン化された報道が多かったが、像の設置は、あくまでもコリアン系米国人を中心とする米国市民の動きだ。日本政府による妨害を乗り越えて設置に至った過程で、さまざまな世代の市民が連帯し、「慰安婦」問題解決への思いを共有したことで運動も勢いづいたことが、参加者らの様子からも伝わってきた。日本政府が妨害し、歴史の事実を否定する限り、今後も「慰安婦」の像や碑は米国各地に作られ続けていくことだろう。
(山口智美・米モンタナ州立大学准教授、2019年11月8日号)