ホームヘルパーら国賠訴訟提起
労基法遵守させない厚労省に怒り
西村仁美|2019年12月6日7:53PM
登録型の訪問介護員(ホームヘルパー)ら3人が11月1日、国家賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。訪問介護現場での労働基準法の遵守されていない状態(本誌9月13日号46頁参照)を正すのに、厚生労働省が規制権限を行使しないのは違法とするものだ。3人は「労働者としての権利が侵害された」などとして、それぞれ300万円の損害賠償を求めている。
原告は藤原路加さん(64歳)、伊藤みどりさん(67歳)、佐藤昌子さん(64歳)。当日の記者会見で3人は「今この形で裁判を起こさないと、全国で働いているホームヘルパーの状況は一向によくならない。(介護保険制度の導入以来)20年間、(勤め先の各事業所で概ね)時給は全く変わっていない」(藤原さん)、「国はヘルパーの人手不足とか言うが(人件費が保障されない介護保険サービスに対して支払われる「出来高払い」制の)介護保険制度が人材不足を生み出している」(伊藤さん)、「今は介護保険下で労働を切り売りしている状況。それではどんなに頑張っても労働者の労働改善などはあり得ない。本当に『やりがい搾取』」(佐藤さん)などと主張した。
厚労省の諮問機関・社会保障審議会の介護保険部会では2021年度からの介護保険法改正審議に向けた議論が来月には終結する。介護保険サービスの利用者自己負担増が基調で、同制度をさらに歪めかねないと3人は危惧する。
担当の山本志都主任弁護士は、「介護の最前線をずっと守り続けているのがヘルパーさんだと思います。この裁判をきっかけにその声を表に出していけるようにしていきたい」と語った。
厚労省に問い合わせたところ「訴状が届いていないので詳細についてはお答えしかねる」との回答。なお、「ホームヘルパー裁判」初回は来年1月20日14時より東京地裁803号法廷で開かれる。
(西村仁美・ルポライター、2019年11月22日号)