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伊勢市美術展で「慰安婦」像扱った作品展示不可に

植松青児|2019年12月11日6:19PM

【危険が消えたはずなのに それでも「展示不可」】

加えて、花井氏が28日から三度にわたって作品の改変を行なったにもかかわらず、伊勢市が展示不可とした事実も明らかになった。

この作品は市展開催前には市民に公開されておらず、仮に抗議や妨害が発生するとしたら、作品の公開後に限られるはずだ。

なおかつ女性像をぼかして何が描かれているか判別できないような改変を行なえば、妨害行為等が起きる可能性は消滅し、展示不可の理由も消滅するはずである。

実際に花井氏は、二度目の改変では当該箇所に絵の具スプレーをかけてぼかし、当該部分に何が描かれているかをほぼ判別不可能にした。さらに三度目の改変では女性像の上に黒テープを貼り、ここも何が描かれているかをまったく判別不可能にした。

それでも伊勢市は展示不可の決定を保持した。同市の鈴木健一市長らの判断も仰ぎ、「安全性の確保」を理由に展示不可の最終判断を30日に下したという。しかし、鈴木市長には改変バージョンを一切見せなかったと、前出の山口課長は筆者の取材に対して答えた。

同市教委も第2改変バージョンまでは現物を視認したが、第3改変バージョンについては、花井氏から電話で連絡を受けておきながら現物を確認しなかったという。

以上の経緯をまとめると、作家側が図像を改変して「安全性の確保」はほぼ達成されたのに、市側がなお「安全性の確保」を理由に展示不可にしたことになる。

これでは「安全性の確保のため」という説明は限りなく「虚偽」と言わざるをえないのでは? と質問したが、山口課長からの回答はなかった。「表現の自由」を蹂躙した伊勢市の責任は限りなく重い。「もはや『弾圧』を受けたような心情だ」と筆者に述べた花井氏や、市民有志による異議申し立てが始まっている。

(植松青児・編集部、2019年11月22日号)

 

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