「ハンセン病」補償法成立
根強い偏見・差別の解消が課題
神原里佳|2019年12月24日12:15PM
【隔離政策などの誤った歴史と差別構造の周知を】
家族訴訟の原告の多くは、実名を公表していない。Aさんもこの日は匿名で、顔を隠すスクリーン越しに発言した。「顔も名前も出せない、そんな私たちの存在や思いを、1人でも多くの人に知ってほしい。そして、同じような思いをする人を二度とつくってほしくない。いつか元患者家族が人前に堂々と姿を出して語れる、そんな社会になることを願っています」。
市民の会福岡では、ハンセン病問題が他の人権課題と比べて市民の関心が低いと実感しており、根強い差別をどう根絶していくかが課題となっている。池田弁護士は「ハンセン病についての正しい知識の普及だけでなく、隔離政策などの誤った歴史や差別構造そのものについて伝えていく必要がある」と語る。1907年から96年まで行なわれた患者の隔離は、「民族浄化」の名のもと国をあげて推し進められ、治療法が確立した後も続けられた。原告のAさんは「私たち家族を差別した人たちも、国が差別しろと言ったからしたのだと思う。国が言うなら間違いないと。だから憎いのはその人たちではなく、誤った知識を国民に植え付けた人たちです」と憤る。
国の政策による国民の分断は、いつの時代も形を変え繰り返し行なわれてきた。この構造が変わらない限り、ハンセン病問題は終わらない。
(神原里佳・ライター、2019年11月29日号)