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公立学校の「変形労働制」撤回求め教員ら大集会
署名は三万筆超える
永野厚男|2019年12月26日4:22PM
公立小中高校等の教員に1年単位の変形労働時間制度を適用可とする「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」改定案が11月19日、衆院で与党と維新等の賛成で可決し22日に参院で審議入り。これを受け日本労働弁護団は24日、同制度反対の緊急集会を東京都内で開催した。
現在、公立学校教員の勤務時間は7時間45分だが、休憩45分を挟む在校時間は8時間30分だ(超過勤務しても残業代は出ず、給料月額4%の教職調整額の支給だけ)。
改定案は学期始めなど繁忙期の勤務時間を増やす分、夏季等の長期休業期間の勤務時間を減じ、年次有給休暇等をまとめて消化しやすくするのを“売り”にする。弁護士らは集会冒頭、改定案への反対理由を次のように説明した。
(1)繁忙期、見かけ上の「時間外労働」は減少するが、労働時間の総量を削減する効果はない
(2)現在は、部活動指導等の日常的な時間外労働が教員の“自発”的業務とされている
(3)過半数代表者との労使協定締結が要件の労働基準法上の変形労働時間制を改定案は条例(労使協定抜き)で一方的に導入可能とする
ところで、東京都教育委員会の中井敬三教育長(当時)は昨年10月15日、中央教育審議会特別部会に「高校教員の在校時間が8月は5時間56分。定時枠をかなり下回り、休みをまとめ取りしやすい閑散期」だと印象づける資料を提出。変形労働時間制推進を主張した。
この資料について名古屋大学の内田良准教授は、「年休と夏季休暇を0時間として加算しており、8月は早く帰ってますよ、と見せかけている」と明言。改定案の科学的根拠の欠如を指摘した。
「変形労働時間制」撤回を求める署名三万数千筆を集めた公立高校教諭の西村祐二さんは、前出(1)の「繁忙期の業務量増で倒れてしまう教員は増え、教育の質は確実に下がる。4月の疲れを8月に取るのはAIしかできない」と訴えた。
(永野厚男・教育ジャーナリスト、2019年12月6日号)