年金受給を遅らせる政府の思惑
鷲尾香一|2019年12月30日12:00PM
確かに2018年の労働力調査によると、65歳以上の就業者数は862万人と前年比55万人増加(1.3%増)している。だが、このうち76.3%は非正規雇用だ。
内閣府の2015年の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」では、「就労の継続を希望する理由」は「収入がほしいから」が49%で圧倒的に多い。
厚生労働省の7月生活保護の被保護者調査によると、高齢者の生活保護世帯数は89万7018世帯で生活保護世帯の55.1%にあたる。
つまり、高齢者は年金だけで生活できないから就業しているのだ。それをあたかも高齢者が好んで就業をしているような理屈を繕い、年金受給年齢を遅らせ、高齢者を労働力として利用しようとしているのは明らかだろう。
高齢者の働き方を見直し、改善することによって、年金制度が将来世代への受給に耐えられるような制度に改正していくことが重要だ。
(わしお こういち・経済ジャーナリスト。2019年11月8日号)