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MMT理論とアダム・スミス

浜矩子|2020年1月2日7:00AM

 そこで思う。今、世の中では「反緊縮」の大合唱が起こっている。国々の政府はケチケチと財政赤字の削減などを追求せず、国債でも何でも使ってバンバン借金し、大盤振る舞い財政を展開すべし。減税をやるべし。こうした世論が盛り上がっている。この世論に理論的背骨を提供しているのが、「MMT理論」(Modern Monetary Theory:現代通貨理論)なるものだ。

MMT理論によれば、自国通貨建てで借金できる政府は、返済負担のことなど考えずに国債を発行し、需要創出に専心すべきだということになる。いくらそれをやっても、ハイパー・インフレなどにはならない。なぜなら、法定通貨の価値は崩れないからだ。よしんばインフレ亢進の兆しがみえても、さらに国債を発行して余りガネを吸収してしまえばいい。MMT論者たちはこのように言う。

さて、この主張に対して、経済学の生みの親はどのような判定を下されるだろうか。不況下に財政が出動して、需要を創り出す。この考え方は、『国富論』の当時にはまだ無かった。だが、説明すれば、大先生もこのやり方自体には理解を示してくれるだろう。しかしながら、野放図な大盤振る舞い財政を通じて、国家の見える手が四方八方に向かって伸び出てくることには、強い懸念を示すだろう。

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