MMTを一蹴するのは早計
高橋伸彰|2020年1月2日7:00AM
L.ランダル・レイ(『MMT現代貨幣理論入門』)によれば租税の目的は(納税に必要となる)貨幣の需要創出に加え、炭素税や金融取引税あるいは累進的な所得税を課すことで温暖化ガスの排出や過剰な金融投機、法外な金儲けといった「悪行」を減らすことにある。
目的だけを見るなら「悪行」を放置し税収不足に陥っている現行の税制よりも、むしろ望ましい。
また、財政赤字とインフレの関係についても過去の事例を挙げて、インフレの原因が「過剰な総需要だった可能性はほとんどない」と主張する。それでも政府がインフレ(財政赤字ではない!)との闘いを優先し支出削減や増税を実施するなら、MMTは反対しないという。
異論反論は後を絶たないが、社会経済学者の間宮陽介氏が評するように「この理論に奇想天外なところはない」 (2019年11月2日付け『朝日新聞』)。そもそも貨幣の本質は理論的にも、歴史的にも未だに神秘である。