むきばんだ遺跡
小室等|2020年1月6日7:00AM
負けが、奇跡の勝ちに。たくさんの人の協力があった。なかんずく、朝鮮半島製の鉄器が多数出土し、韓国考古学界重鎮のシンギョンチョル釜山大学教授(当時)は「韓国にとっても重要な遺跡」と日韓合同研究者署名に協力。総数二四二二筆、うち韓国六九六筆は、韓国の考古学研究者の七割に及ぶ。
遺跡丘陵には、妻木晩田遺跡を謳った、詞・佐古和枝、曲・李政美の「おいで みんな ここへ」が、永六輔さんの揮毫で石碑に。
一一月一六日に開かれた「むきばんだ応援団」結成二〇周年のイベントで、娘のゆいと歌ってきた。
〈おいで さあ みんな ここへ/この坂をのぼったら 海がみえるから/海のむこうから/なつかしい風がふく/長い 長い 時をこえて/なつかしい風がふく/耳をすませば 聞こえてくる/誰も知らない 遠い昔の物語/あなたの影と わたしの影が/揺れて 揺れて 揺れて/ひとつになっていく/おいで さあ みんな ここへ/この坂をのぼったら 希望がみえるから〉
遺跡から武器が出てこない、朝鮮と戦った痕跡はない。朝鮮半島の人々と仲良くしてきた歴史が妻木晩田遺跡に行けば見られる。遺跡はタイムトンネルだ。遺跡に立てば、二〇〇〇年を行き来できる。海の向こう、目の前に朝鮮半島、手を伸ばせば届く。タイムトンネル妻木晩田は、朝鮮と日本を未来へ繋ぐ貴重な財産なのだ。
(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2019年12月6日号)