「ポスト安倍」レースの「予鈴」がなった
佐藤甲一|2020年1月7日7:00AM
その点では今回辞任に追い込まれた菅原一秀前経済産業相、妻の案里議員の問題にからんだ河井克行前法相のスピード辞任はその教えを忠実に守った=「鉄の戒律」を実行したと言える。だが、こうした鉄壁の「武断政治」も力があるうちはまだいい。
任期満了まで残り1年9カ月、総裁4選がなければそろそろ「次」が気になる時期にはいささか相応しくなかったのではないか。そこからこの政権に狂いが生じ始めたといえるだろう。
なぜまずかったのか。両大臣の辞任により、事実上「派閥の親分」だった菅官房長官の求心力が落ちてしまったことである。辞任劇は菅氏本人の評価を大きく下げ、「ポスト安倍」レースに大きな支障になったことは疑いない。
一方、かく言う安倍首相は行きすぎた身内びいきを露見した「桜を見る会」で一向に我が身を処す気がない。つまり自分のことでは「鉄の戒律」を実行する気がない。逆に事態を回避するため、またしても公文書の廃棄、湮滅で逃げようとした。
その結果、危機管理の責任者である菅氏に起きたことは、政権擁護への執着心が失せたことではなかったか。つまり、忠誠心が削げたのである。
その姿は今回の事案の菅氏の対応ぶりを見ていれば明らかだ。これが危機管理の手腕随一といわれた同じ菅氏のものとは思えない。聞かれもしない「官邸枠」の招待者数を明らかにする。首相の妻の安倍昭恵氏の推薦で招待者が決められていた核心的事実をあっさり内閣府の官僚に認めさせる。