石垣市議会、自治条例廃止案を1票差で否決
阿部岳|2020年1月10日5:47PM
「自治体の憲法」は、辛うじて1票差で守られた。沖縄県石垣市議会は12月16日、自治基本条例を廃止する条例案を10対11の賛成少数で否決した。
ことは石垣市だけの問題ではなかった。主権者である市民を中心に、役所、議会の役割を定め、自治の理念を明らかにする同様の条例は、全国で377自治体が制定している(8月現在、公共政策研究所調べ)。廃止されれば、全国初の不名誉になるところだった。
自治基本条例は、差別主義者たちの攻撃目標とされてきた。その一人、「自治基本条例に反対する市民の会」の村田春樹会長はあの「在日特権を許さない市民の会(在特会)」で活動した人物。「市政に外国人を含むプロ市民が介入する」と危機をあおってきた。
「市民」の定義があいまいなため外国人が含まれ、市政が「乗っ取られる」という。しかし、もともと地方自治法上の「住民」も外国人を含んでいる。外国人排斥、差別を目的とした荒唐無稽な主張でしかない。その村田氏が今年11月に石垣市で条例廃止を求めて講演し、会場にいた自民党会派の市議たちが実行に移したのだった。
実は自民党本部も「チョット待て!!“自治基本条例”」という政策パンフレットを発行し、「国家の存在を否定している」などと虚偽を交えて攻撃している。驚くべきことに、タイトルは村田氏の著書と同じ。主張も一致している。
石垣市には陸上自衛隊配備計画があり、市民が反対する。有権者の4分の1以上の署名を集め、自治基本条例が実施を義務と定めているはずの住民投票を市に求めて裁判で争っている。
条例が廃止されても過去の住民投票請求は帳消しにできない。ただ、国策の障害になり得る民意反映の回路をふさいでおく動機が、自民党や差別主義者にはある。
石垣市が再び標的になるのか、次は他の自治体か。全国で注視していく必要がある。
(阿部岳・『沖縄タイムス』記者、2019年12月20日・2020年1月3日合併号)