加計学園裁判、前川喜平氏の証人認めず
原告側は「裁判官忌避」申し立て
片岡伸行|2020年1月17日8:15PM
行政私物化が指摘される「桜を見る会」の先行事例ともいえる疑惑の蓋を、公正であるべき司法が閉じてしまった。加計学園獣医学部(愛媛県今治市)をめぐる行政文書不開示決定取り消し裁判の第6回口頭弁論が12月4日、東京・霞ヶ関の東京地裁で開かれ、古田孝夫裁判長は原告側が証人申請していた当時の文部科学事務次官・前川喜平氏の証人申請を却下した。
安倍晋三首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議が、首相の「腹心の友」が経営する加計学園を獣医学部新設の事業者に選定したのは2017年1月。前川氏は同月まで文科事務次官を務めた。退任後、この特区認定をめぐり官邸側から直接の働きかけがあったことを明かし、「行政が歪められた」などと発言している。
原告側代理人の海渡雄一弁護士は同日の法廷で「特区の認定には透明性と公平性が強く求められるが、この認定はきわめて異常な手続きによって進められた。その実態を隠すために文科省が文書を不開示にしたのかどうか、当事者の証言を聞く必要がある」などとして「裁判所の最善の判断」を求めたが、古田裁判長は「双方の準備書面で判断する」のひと言で前川氏らの証人申請を退けた。
これに対し海渡弁護士は「納得できない。異常な手続きが明らかになるのを恐れて、官邸の指示で文書不開示としたことが推認される。当事者の証人調べをせずに(裁判所が)判断しようとするのは公正さに欠く」などとして、即座に「古田裁判長ら3人の裁判官の忌避」を口頭で申し立てた。
民事訴訟法24条に基づき裁判官忌避が申し立てられた場合、別の裁判官が申し立てを認めるかどうかの判断をする。判断には2カ月間ほどかかるとされる。同訴訟は結審していないため、忌避が認められれば別の裁判官が裁判を継続。却下されれば、再び同じ裁判官によって審理が再開される。
(片岡伸行・記者、2019年12月20日・2020年1月3日合併号)