「GSOMIA」を無条件に受け入れるメディアの劣化度
田島泰彦|2020年1月20日6:55PM
【報道の自由を侵害する危険性と向き合え】
これらの社説から窺えるのは、ほぼ新聞全紙が日韓のGSOMIAの存在をアプリオリに前提とし、是認し、これに対して同意しているということである。ここから韓国による協定破棄や失効は許されず、破棄を取り消すべきであって、失効が土壇場で回避されたのは安堵すべきことだ――と、全紙が受け入れた。そこに異を唱える新聞は見当たらない。
GSOMIAは秘密軍事情報の共有・保護と、それに関わる日韓間、日韓米間の安全保障や安保協力、協力体制にとって国益そのものであると受け止められている。だから、GSOMIAそのものに疑いを向け、問題点を吟味する姿勢やスタンスは、これらの社説からは微塵も見られない。
日米間のGSOMIAは適性評価制度の導入も含め特定秘密保護法を準備し、制定するうえで先導する役割を担ったことを忘れるべきでない。さらに、日韓であれ日米であれ、共有される秘密軍事情報は(提供する場合も、受領する場合も)日本では特定秘密保護法をはじめとする日本の秘密保護法制の下で保護されていることが重要である。
特定秘密保護法は知る権利や情報公開、取材の自由や報道の自由を侵害する危険があるとするなら、これによって保護されるGSOMIA上の秘密軍事情報の正当性そのものに根源的に向き合うことが、むしろ当然である。
深刻な問題を抱えているにもかかわらず、異論を提示する新聞はない。ほぼすべての新聞がGSOMIAを無条件に受け入れ、是認している姿を目の当たりにすると、事実上の翼賛体制そのものであり、むき出しの国益報道だと感じざるを得ない。報道の自由や、ジャーナリズムの精神はどこに行ってしまったのだろうか。
(田島泰彦・早稲田大学非常勤講師、元上智大学教授、2019年12月20日・2020年1月3日合併号)