相模原殺傷事件公判開始、「考え続ける会」がシンポ
小宮純一|2020年2月4日11:26AM
【園内部の実態が犯行の深部にあったのか】
平野さんは同園を退所した息子・和己君の処遇記録と行動記録を示し、「処遇は入所説明とまるで違った。“日中活動”と称するのは昼の1時間ほどキッチンタイマーや電卓を入所者に渡して『これで遊んでいなさい』。“ドライブ”というのは、車に乗せて施設周辺を周回し、車の外には出してもらえない。業界では、これを監禁ドライブと呼んでいるという。植松被告も最初から殺傷対象とした入所者を『生きる意味のない人間』だとは思っていなかった。検察側が冒頭陳述で述べた通り、施設での勤務経験を踏まえて『生きていても仕方のない命』と考えたに違いない」と分析。被告の犯行の深部には同園の処遇実態があると批判した。
千田さんは「今、特別支援学校の高等部入学者が急増しパンク状態だが、これは普通学校で健常者と共学させてこなかったツケ。被告は殺害動機を“世界平和のため”と言っているが、支えながら苦しんでいる家族の負担を軽くするという意味だという。人間扱いしない園の処遇が、そう考えさせたのではないか」と問題提起した。
高岡さんは、公判で明らかになった被告が連れ回した施設職員に「こいつはしゃべれるのか?」と確かめながら選別刺殺していった犯行態様について、「コミュニケーション至上主義」と厳しく批判。被告が抱いていた福祉の理念が施設の実態によって打ち砕かれたが、現実を変えるのは困難で、自分の理念を真逆にして「コミュニケートについてこれない人間は遅れた人間で、排除すれば“平和”になる」と考えたのだろうと読み解いた。8日の初公判で被告が右手の小指を噛み切ろうとした行為をどうみるか問われ、「犯行前に美容整形外科手術を受けたとされる被告なので、男気を表そうと傍聴席の遺族に謝罪した後、ヤクザの“指詰め”の真似をしたのではないか」と答えた。
判決公判は3月16日の予定。
(小宮純一・ジャーナリスト、2020年1月17日号)