山形百貨店「大沼」破産
突然の閉店にくすぶる疑念
川村昌代|2020年2月21日2:02PM
1700(元禄13)年に初代・大沼八右衛門が山形市の中心地・七日町で荒物屋を創業して以来320年、松坂屋・三越に次ぎ全国でも3番目に古い歴史を持つ老舗デパート「大沼」が1月27日、山形地裁に破産を申請した。
前日付で営業停止と同時に従業員191人を全員解雇。負債総額は30億円にのぼるという。長澤光洋代表取締役は会見で「昨年10月から異次元の売り上げの落ち込みがあり、前年比3割も減った。資金繰りに追われ策を打つこともできなかった」と説明した。だが、あまりに唐突すぎる破産申請に内外から疑問の声が上がっている。
「24日からバレンタインセールを始めたばかりですよ。まさかすぐに、とは思わなかったので、今日もお昼を買いに行った。そしたらやっぱり閉まっていた。普通、閉店セールとかしますよね?」(近隣で働く50代女性)
取引業者への連絡も申請前夜。多くの業者が27日早朝、委託商品を引き取りに押しかけた。地元在住の記者が説明する。
「売り上げが3割減ったというのもトリックで、昨年夏に閉店した米沢店の売り上げを含めた前年実績と比較している。本店だけなら売り上げ減は1割もなかったはず。2018年3月に事業再生手続きを経て金融団から約15億円の債権放棄を受け、金利も年1%に引き下げてもらったばかり。本当に債務超過だったのかも疑問です」
実際、売り場がガラガラになるなど、在庫が減った様子もないし、米沢店閉店に伴う退職者以外にリストラをした形跡もない。店内に残った在庫は最大債権者の山形銀行の担保になっており、管財人が状況把握に追われる中、賞味期限が迫っている食品も多いという。
一体何があったのか。山形県内で唯一生き残った大沼への地元の期待は大きかった。「残念だ」では終われない。第1回債権者集会は今年6月に開かれる。
(川村昌代・ジャーナリスト、2020年2月7日号)