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植村隆・元『朝日』記者裁判、櫻井よしこ氏免責は政権「忖度」か
佐藤和雄|2020年2月28日5:35PM
元『朝日新聞』記者の植村隆氏(韓国カトリック大学校客員教授、『週刊金曜日』発行人)が、国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこ氏と櫻井氏のコラムを掲載した出版社3社を訴えた札幌訴訟の控訴審判決が2月6日にあった。札幌高裁(冨田一彦裁判長)は、櫻井氏が植村氏の記事を「捏造」と表現する際に、植村氏本人に取材して事実関係を確認する必要はなかったとの判断を示し、植村氏の請求を棄却した。これまでの最高裁の判例から大きく外れる異例の判断だ。櫻井氏のやりかたが司法で追認されれば、当事者に確認しないままのフェイクニュースが社会に氾濫するのではないか。
植村氏は1991年、韓国人元「慰安婦」の金学順さんの証言を取材。記事は同年8月と12月、『朝日新聞』に掲載された。この記事に対し櫻井氏は2014年に月刊誌『WiLL』4月号で「植村記者が真実を隠して捏造記事を報じた」と指摘。『週刊新潮』『週刊ダイヤモンド』誌上でも植村氏の記事を「捏造」と断定する論文やコラムを書いた。
名誉毀損訴訟では、記事などによって誰かの名誉を傷つけたとしても、記事の重要な部分の事実関係が「真実」という証明ができたり、「真実と信じる」に相当の理由があったりすれば、免責される。
一審の札幌地裁では、櫻井氏の論文などが植村氏の社会的評価を「低下させた」と認めた。その一方、櫻井氏が他の新聞記事や論文などから、植村氏が〈金学順さんが人身売買されて慰安婦となったと知りながら、女子挺身隊と結びつけた〉という捏造記事を書いた、と信じたことには「相当の理由がある」などと結論づけた。
このため控訴審で最大の争点となったのは、櫻井氏が植村氏が捏造記事を書いたのが真実と信じたのに相当の理由があったかどうかだった。これまでの最高裁の判例では「確実な資料や根拠に基づき真実だと信じることが必要」とされてきたからだ。
植村氏が捏造記事を書いたと信じるのであれば、事実関係の確認など本人へ取材を申し込むのが、ジャーナリズムの世界ではある意味「ルール」のようなものだ。