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植村隆・元『朝日』記者裁判、櫻井よしこ氏免責は政権「忖度」か
佐藤和雄|2020年2月28日5:35PM
【判決文「単なる慰安婦」とは】
しかし、今回の判決は、金学順さんの記者会見を報じた韓国紙『ハンギョレ』、訴状、月刊誌の記事の3点だけで十分であり、「改めて取材や調査をすべきであったとはいえない」との判断を示した。さらに「推論の基礎となる資料が十分あると評価できるから、事実確認のため、本人への取材を経なければ(真実)相当性がみとめられないとはいえない」と述べた。
植村氏は記者会見で「取材もしないで、嘘の報道ができることになる。フェイクニュースを野放しにすることになる」と指摘した。
判決文の中で異様さが目立つのは、1991年8月の植村氏の記事についてのくだりだ。「日本の戦争責任に関わる報道として価値が高い反面、単なる慰安婦が名乗りでたにすぎないというのではあれば、報道価値が半減する」
だから櫻井氏が、「植村氏が女子挺身隊と慰安婦を関連づけた」と信じたことには相当性がある、というのだ。
「単なる慰安婦」とはなんだろうか。経緯は様々だろうが、多くの女性たちが自分の意思に反して「慰安婦」にさせられ、尊厳を踏みにじられた。もはやこれは世界の常識である。そうした犠牲者に対し、「単なる慰安婦」と呼ぶ感覚は、司法への信頼を大きく損なうだろう。
『朝日新聞』の「首相動静」で調べると櫻井氏は頻繁に安倍晋三首相にインタビューや会食をしている。例えば1月17日、日本料理店「下関春帆楼 東京店」で葛西敬之JR東海名誉会長らとともに。
首相とこれほど近い櫻井氏である。札幌高裁の冨田裁判長は、トラの尾を踏むことを恐れたのだろうか。「忖度」はあったのか。
「政権への忖度はあった」と書く場合には、ご本人への取材申し込みは必須だと思うが、この判決文を読むと「しなくてもいいよ」と言われているような気がする。
(佐藤和雄・ジャーナリスト、2020年2月14日号)