障害者は投票に行くな?
大阪地裁、ヘルパーの代理投票求める訴え棄却
平野次郎|2020年3月23日5:49PM
字を書くことが困難な障害者の代理投票を補助する人を投票所の係員に限定した公職選挙法の規定は「投票の秘密」を保障する憲法に反するとして、自ら選んだ補助者の代筆による投票を求めた裁判の判決が2月27日に大阪地裁(三輪方大裁判長)であり、同地裁は「公選法の規定は合憲」と判断し、原告の請求を棄却した。
原告は大阪府豊中市に住む中田泰博さん(47歳)。中田さんは脳性まひで字を書くのが不自由なため、選挙のたびに投票は付き添いのヘルパーに代筆してもらっていた。ところが2016年7月の参院選で、豊中市内の投票所に行きヘルパーの代筆による投票を申請しようとしたところ、市選挙管理委員会から13年の公選法改正で代理投票は投票事務従事者に限定されていると言われ、ヘルパーによる代筆が認められなかった。「見知らぬ公務員に投票の秘密を知られるのは耐え難い」と感じた中田さんは投票を断念。17年2月に国を相手に訴訟を起こした。
障害者の選挙権については、2000年施行の成年後見制度によって後見人が付いた重い障がい者らが選挙権を失う規定が公選法に盛り込まれた。これに対しダウン症の障害者が提訴した裁判で「選挙権を侵害する」との違憲判決が13年に出たことから公選法が改正され、選挙権の排除規定が削除された。ただし代理投票による不正を防止する名目で同法48条2項が改定され、代理投票の補助者が投票事務従事者に限定された。
今回の判決では、その公選法48条2項の規定が投票事務従事者による代理投票を認めているので誰に投票したか第三者に知られざるを得ず、憲法15条が保障する秘密投票権は制約されると認定。そのうえで代理投票を投票事務従事者に限定することは、補助者としての政治的中立性が確保され守秘義務が課せられているので他者からの不当な圧力や干渉を回避でき合理的と判断した。一方、障害者が希望する補助者による代理投票は、個々の障害者の判断能力などに応じて補助者としての適格性や中立性を判断するのは容易ではないとして退けた。