障害者は投票に行くな?
大阪地裁、ヘルパーの代理投票求める訴え棄却
平野次郎|2020年3月23日5:49PM
【差別なくす合理的配慮を】
裁判で原告らは、郵便投票では投票所に行けない重度障害者が選挙管理委員会にあらかじめ届ければ自ら選んだ「代理記載人」によって代筆投票できるのに対し、代理投票の補助者を投票事務従事者に限定して自ら選べない公選法の規定は憲法14条の「法の下に平等」に反すると主張。しかし判決は、選挙権の行使を保障するために投票内容を伝える第三者である「代理記載制度における代理記載人」と「代理投票制度における補助者」に区別を設けるのは合理的な根拠がないとは言えないとし、憲法14条に違反しないとした。
さらに原告らは公選法48条2項が障害者権利条約や障害者基本法、障害者差別解消法などの規定に反する状態にあったのは立法不作為だと主張した。障害者権利条約29条は障害者の意思の自由な表明を保障するため必要な場合には障害者が選んだ者が投票を援助することを認めるよう締約国に求めている。障害者基本法28条は障がい者が円滑に投票できるように投票所の施設や設備など必要な施策を講じなければならないとし、障害者差別解消法3条は国や自治体は障がい者差別解消のために必要な施策を策定し実施しなければならないとした。だが判決は原告らの主張を採用しなかった。
判決後の記者会見で中田さんは「障害者は投票に行くなと言っているように聞こえた。見捨てられたと思わざるを得ない」と無念さを口にし、控訴の意向を表明。判決をこう批判した。
「他者からの圧力や干渉を避けて障害者の自由な意思表明を保障するためと言いながら、障害者一人ひとりに意思を確認するのは投票所の係員の過重な負担になるから障害者は憲法が保障する権利を侵害されても仕方がないと言っているように聞こえた。障害者差別解消法に書かれている社会的障壁をなくすための合理的配慮を選挙制度に適用しないのは差別にほかならない」
(平野次郎・フリーライター、2020年3月6日号)