安倍晋三首相を囲む「48（よつば）ホールディングス（株）」の当時の代表・淡路明人氏（首相の左隣）ら＝2016年8月13日。（提供／田村智子参議院議員事務所）

安倍昭恵氏の個人事業に資金提供した「悪質マルチ企業」代表者が２０１６年の「桜を見る会」に招待されていた問題で、数多くの返金訴訟が提起される中、代表者の設立した財団が「公益財団法人」に認定されていた。

仮想通貨「クローバーコイン」を販売していた「48（よつば）ホールディングス（株）」（北海道札幌市）の淡路明人代表（当時）は、２０１６年に安倍昭恵氏が主体となって山口県下関市に開設した「ＵＺＵハウス」に資金提供した。

そのお礼なのか。同年４月８日に開かれた安倍後援会主催の「桜を見る会」前夜祭と翌９日の「桜を見る会」に参加し、さらに、８月13日の「ＵＺＵハウス」開設記念パーティと海峡花火大会観覧にも招待されて、安倍晋三首相夫妻らとの記念写真に収まった。

「クローバーコイン」の売り上げが急増したのはその翌月、同年９月以降のことだ。結果としてこの「首相との記念写真」が消費者被害を拡大させた疑いがある。しかし、安倍首相は「私も妻もご指摘の人物を存じ上げない」と答弁している（『週刊金曜日』３月20日号詳報）。

【業務停止命令に至る手口】
消費者庁発表の「勧誘事例」によれば、その手口はこうだ。

クローバーコインは１口３万円。公共施設の会議室などで「セミナー」を開き、「公開前の仮想通貨を購入すれば１カ月半後の公開時には10倍に値上がりする」「公開前に持てるから儲かる」などと、値上がりが確実に見込まれるかのように説明した。

同社のパンフレットによると、誰かに勧めて３人がそれぞれ１口購入すれば、紹介者に９０００円の紹介料（ボーナス）が入る。会員が鼠算式に増えて計17人になれば３万７０００円のボーナスが入る。また、購入者は購入額の20％分の「リップル」を保有でき、それを円に変換できる。

ビットコインなどと並ぶ仮想通貨の代表格の一つがリップルだ。高率の紹介料と、名の知れているリップルとの“抱き合わせ商法”で連鎖販売を拡大。消費者庁によれば、17年６月までに１９２億円超を売り上げる急成長を遂げた。

しかし、同年７月31日に札幌国税局の強制調査を受け、８月１日には消費者庁が立ち入り調査。10月３日に同社は「クローバーコインの販売終了」を発表した。

この消費者庁の動きについて『日本消費経済新聞』（同年８月25日発行）は〈当初５月に予定していた立入検査を延ばしたことで後手に回った〉と指摘した。

17年上期には同社の問題点を把握していた消費者庁はなぜか「立入検査」を遅らせ、10月27日にようやく同社に対し「特定商取引法違反」で３カ月の業務停止命令を出した。前述の「勧誘事例」の公表はこのときのことだ。

【訴訟中に財団法人設立】
「48ホールディングス」は18年５月になって会員に対して「解約」に応じる通知を出したものの、返金手続きを遅々として行なわなかったため、その前後から札幌地裁への提訴が相次ぐ。

地元で訴訟代理人となっている弁護士によれば、「現在でも数十を超える事件が係属しており、今年３月、４月で10人以上が訴訟を提起した。今後さらに増加することが見込まれている」と話す。

数多く返金訴訟が起こされる中、淡路氏は18年12月、東京都港区南青山に「一般財団法人クローバー財団」を設立した。

08年12月１日から全面施行した「公益法人三法」によって、３００万円以上の拠出金さえあれば誰でも、たとえ公益目的でなくても「一般財団法人」を設立できるようになった。ただ、クローバー財団の活動は「公益目的」である。

同財団のホームページには、設立趣旨がこう紹介されている。

〈経済的な理由で学費の支弁が困難な大学生・大学院生に対して奨学金を給付する（以下、略）〉

月額４万円（年48万円）の奨学金を２年間にわたり給付するもので、学生に返還義務はない。

18年度は北海道大学、埼玉県立大学、東京理科大学など９大学の学生計10人に奨学金を給付。19年度も北海道医療大学、東京医科歯科大学、一橋大学、大阪大学など10大学計10人に給付した。

貴重な慈善活動だが、奨学金の原資はどこからきているのか。