東京外環道工事、気泡に続き騒音問題も
丸山重威|2020年4月16日8:03PM
【提出記録は黒塗り まともに質問に答えず】
2017年暮れから東京地裁で進められている違憲裁判は、以上の新たな事態にも対応しつつ原告側の弁論が進んでいる。対する国側は反論はするものの、トンネル道路がなぜ必要か、本当に安全な工事になっているのか、建設を「違憲だ」とする住民側の主張のどこが間違いと考えるのか、などについては「頬被り」。一切積極的に説明しようとしない。
作業記録の「黒塗り」事件はその典型だ。野川での気泡噴出時の工事はどんな状況だったかを検証するため、住民側は当日の作業記録の提出を要求した。ところが国側がそこで出してきたのは、タイトルと日付だけ残して「作業の時刻」や「シールド掘進内容」はすべて黒塗りの「のり弁」文書。さすがに裁判所も再検討を求めた。
こうした中で住民側は、改めて「これまでの交渉で説明を求めたものの納得のいく回答がなかった」200項目以上の疑問を列挙のうえ国側に説明を要求。さらに地下水調査などの環境アセスメントについても、例えば地下40メートルを調べるのに10~30メートルのボーリング調査をわずか18本しか行なっていないなどの杜撰さを指摘し「これでどうして地下の地質がわかるのか」と批判している。
裁判は新型コロナウイルス問題で日程が延期され、5月27日の第8回口頭弁論で、本格的な論戦に入る。「大深度地下は地表とは無関係。だから地権者に断らなくても財産権侵害にならない」として決めた「大深度地下使用法」の下でこれだけ次々に問題が出てくるのはおかしくはないか? 憲法原則を忘れ、「開発優先」で進む法治国家の理性が問われている。
(丸山重威・ジャーナリスト、2020年3月27日号)