君が代不起立2009年訴訟、東京高裁で根津さん逆転勝訴
懲戒処分は「違法」と指摘
永尾俊彦|2020年4月21日1:30PM
都立特別支援学校の教員だった根津公子さんと河原井純子さんが2009年3月の卒業式で「君が代」斉唱時に起立せず、都教委から職務命令に違反したとして受けた停職6カ月の懲戒処分の取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、3月25日、東京高裁(小川秀樹裁判長)は河原井さんの処分だけを取り消した一審判決を変更し、根津さんの処分も取り消した。損害賠償請求は一審同様棄却した。
同高裁は、判決で根津さんの不起立は09年3月の卒業式が6回目で、その他勤務時間中に「強制反対 日の丸 君が代」などと印刷されたトレーナーを着用して処分を受けていることなどから、停職処分を選択すること自体には「相当性を基礎付ける具体的な事情がある」とした。
しかし、停職期間の上限は6カ月とされており、より重い処分は免職のみで、その後の卒業式で職務命令に従うか教員の身分を失うかの選択を迫られる状況になると述べ、停職期間という量的な問題にとどまらず身分喪失という「著しい質的な違い」があり「心理的圧迫の程度は強い」と指摘。裁量権を逸脱し、違法と結論付けた。
18年5月の一審東京地裁判決は、不起立の頻度が高いことや前述のトレーナー着用などから処分は適法と判断していた。
逆転勝訴判決について根津さんは「これまでの裁判では認められていた本人尋問が認められなかったこともあり1ミリも望みを持っていなかったので、信じられないくらいうれしいです」と話した。
2人が06年から09年まで毎年の卒業式での不起立で受けた処分の取り消しを求める四つの裁判の代理人である岩井信弁護士は、今回の判決について「根津さんが08年の不起立で受けた停職6カ月処分の取り消しを求めた裁判では処分は取り消されなかったのに、今回(09年)は同様の判決を漫然と維持せず、取り消させた意味は大きいです」と述べた。
ただ、それ以前の2人の処分取り消しを求めた裁判では認めていた損害賠償請求を今回は2人とも容認しなかったのが最大の問題点だと岩井弁護士は指摘する。「判決も認めている『心理的圧迫』を利用して、都教委が機械的な累積加重処分を意図的、組織的に進めていたことの重大な違法性を認めなかったからです」。
また、今回の判決は07年の根津さん停職6カ月、河原井さん停職3カ月の処分取り消しを認めた15年の東京高裁判決(須藤典明裁判長)とは異なり「停職6カ月の『心理的圧迫』が、思想・良心の自由などの憲法上の権利にどう影響したか判示していない点は後退しています」と話した(須藤判決は16年に最高裁で確定)。