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熊本地裁、九州北部豪雨水害での行政責任を認定

岡田幹治|2020年4月21日7:05PM

裁判の現地進行協議で説明する今本博健名誉教授(左)と板井俊介弁護士(右=写真提供)。

河川水害で被災した住民が裁判に訴えても、ほとんどの場合、行政責任を認めず、したがって損害賠償も認めない判決が出る「司法の壁」――それに小さな穴をあける判決が出た。

2012年7月の九州北部豪雨の際、熊本市が管理する水路から激しくあふれ出た水でゴルフ練習場が被害を受けたとして市を訴えた裁判で、熊本地裁(小野寺優子裁判長)が3月18日、訴えの一部を認め、約42万円の賠償を命じる判決を言い渡したのだ。

この裁判は、農業用水路と白川をつなぐ水路から流出した激流が隣接のゴルフ練習場の外壁を突き破り、受付などがある建物の柱や天井にずれを生じさせて雨漏りするようになったとして、ゴルフ練習場の経営者が熊本市に約4087万円の賠償を請求していたものだ。

裁判では、水路の構造などに瑕疵(不具合・欠陥)があったかどうかが争点になり、原告側が今本博健・京都大学名誉教授の意見書などを基に「瑕疵あり」と主張した。これに対して被告側は大本照憲・熊本大学大学院教授の意見書などを基に「瑕疵なし」と反論した。

判決は、今本名誉教授の意見は「被害当日の状況を合理的に説明するもの」であり「十分に説得力がある」と述べる一方、大本教授の見解は「合理性に疑問がある」とした。

そのうえで、(1)水路の構造に問題があり、豪雨のときに流出水が一気にあふれる危険性は予見できた (2)その危険性は、たとえば高さ2メートル程度のコンクリート製擁壁を設置していれば防ぐことができた (3)この措置に多額の費用を要するとは考えられない――

とし、水路の設置または保存に瑕疵があったと認めた。

ただ賠償については、水路からの流出水によって建物の柱や天井のずれが生じたとは断定できないとして、この点に関する請求は退け、外壁の修理費だけに限定した。

熊本市は「判決文を精査し、控訴するかどうか検討したい」としている。

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