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新型コロナウイルス・女性に高い感染リスク
暴力被害と経済的不安も増
世帯でなく個人単位の給付を
斎藤文栄|2020年5月1日7:00AM
3月28日、橋本聖子男女共同参画大臣は政府の新型コロナウィルス感染症対策本部で、関係閣僚に対し、女性に与える影響に十分配慮して施策を実施するよう要請した。こうした要請は日本だけではなく、国際社会でも行なわれているが、十分に考慮されているといえるだろうか。
国連女性機関(UN Women)が、新型コロナウィルス対応におけるジェンダーによる差異を強調している。特に女性に高いリスクとして懸念されているのは、①保健医療従事者や介護者に女性が多いことから感染リスクが高いこと、②非正規雇用・不安定雇用の割合が高いため、経済的な影響がより大きいこと、③育児・介護の担い手としての負担が大きくなること、④DV(ドメスティックバイオレンス)や性的搾取の事例が増えること、⑤新型コロナウィルス対策に資源が集中するため、出産、産前産後ケア、避妊、安全な中絶などのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)サービスが行き渡らなくなることである。
公益財団法人ジョイセフが、途上国のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルスの状況について開催したオンラインセミナーでは、各国でクリニックなどの現場を持つ国際家族計画連盟(IPPF)のスタッフから、物流や外出制限のために、既にHIV検査や避妊サービスの提供を縮小せざるを得ない状況や、医薬品、避妊具・避妊薬の遅れによる望まない妊娠、安全でない中絶の増加などが指摘された。米グッドマッハー研究所による試算では、妊産婦や新生児への基礎的ケアが10%減少した場合、妊産婦死亡が2万8000件、新生児死亡は16万8000件増えるという。
暴力に関しては、各国でDVが急増しているという報告が相次いでいる。ストレスを感じる配偶者からのDVや外出規制で逃げ場所がなくなった相談なども増えているそうだ。日本でもDV増加への対応は喫緊の課題だ。全国女性シェルターネットは3月末に、DV・児童虐待防止に関する要望書を政府に提出。相談窓口や一時保護委託先の確保などをイタリア、フランス政府の取組なども紹介しつつ要請している。これに対する内閣府男女共同参画局の動きは早く、相談体制の拡充をはかるために、従来のDV相談ナビに追加して「DV相談+(プラス)」が開設された(インフォメーション参照)。 男女共同参画局は、他にも国際機関の発表や報告書を日本語に翻訳し、新型コロナウィルス対策のジェンダー的側面に国際的な水準を取り入れようとしている。これは今までにない動きである。
一方、旧態依然とした対応も残る。政府が緊急経済対策として発表した1人10万円の特別定額給付金は、受給権者が世帯主とされたため、世帯主の夫から逃げているDV被害者の場合は受け取れない。住居地にいないDV被害者への支給方法については総務省、厚生労働省、内閣府が連携し、申し出があった場合には支給するよう手当されたものの周知されておらず、自治体の現場は混乱している。さらに申出期限が4月30日と短いため、前出の全国女性シェルターネットは4月24日、「せめて5月末までに延長」を求める要望書を政府に提出した。
そもそも最初から個人給付にできなかったのか。東日本大震災の際、給付金や義援金を世帯主が使い込んだ例もあり、世帯単位ではなく個人単位で給付してほしいとの要望が女性団体から出されたのに、教訓が生かされていない。
国連は4月9日、女性に対する影響をまとめた包括的政策提言を発表した。経済、保健、無償ケア労働、ジェンダーに基づく暴力、人道的・脆弱な環境下の影響や人権に関する影響を分析。これを受け、グテーレス国連事務総長は国家対応案の重要項目として女性・女児への対応を据えるよう各国に要請するメッセージを出した。
コロナ禍で生じたジェンダー課題は、平時にも改善が求められてきたことばかりである。根本的にこの課題が解決されない限り、非常時になれば同じことが繰り返される。平時に戻った時の対応が今から問われている。
(斎藤文栄・公益財団法人ジョイセフアドボカシー・マネージャー、20年5月1日号)
【インフォメーション】
◆DV相談+(プラス)4月20日~
▼電話での相談0120-279-889(つなぐ・はやく)4月29日(水)夜から24時間対応
▼メールでの相談https://form.soudanplus.jp/mail
▼SNSでの相談https://form.soudanplus.jp/ja
メール・SNSは5月1日(金)から英、中、韓、スペイン、ポルトガル、タガログ、タイ、ベトナムなど10か国語程度対応
▼詳細:内閣府男女共同参画局http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/sp_index.html
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