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望まれる安倍政権の交代
高橋伸彰|2020年5月7日12:00PM
実際、国内総生産(GDP)は増えなくても化石燃料から再生可能なエネルギーに転換し、地球温暖化に歯止めをかけて自然災害から人命や財産を守れるなら、生活はより豊かになる。
今から半世紀前にローマクラブが公表した『成長の限界』においても、その序文では「100年以内に地球上の成長は限界点に到達する」という危機の予測に続き、「こうした成長を変更し、将来にわたって持続可能な生態学的ならびに経済的な安定性を打ち立てることは可能である」という希望のシナリオが示されていた。そのうえで同書は「行動を開始するのが早ければ早いほど、それに成功する機会は大きい」と述べ、世界中の人びとに長期的な視野に立った行動を訴えたのだ。
『成長の限界』のプロジェクトに参加して人生が変わったというドネラ・H・メドウズは、ダートマス大学で得たテニュア(終身在職権)の地位を捨て、希望のシナリオを伝えるために25の新聞に800本ものコラムを連載した。その中でドネラは危険にさらされているのは地球の環境や資源よりも「私たちが後生大事にしている(中略)『永久に続く経済成長』という幻想」(『地球の法則と選ぶべき未来』)だと警告した。
人類と地球の未来に思いを馳せるなら、成長優先のアベノミクスは必ずしも唯一の選択肢ではない。むしろ、もう一つの選択肢を示し実践することが、9年前の「3.11」で未曽有の自然災害と原発事故の脅威を経験した私たちのミッション(使命)ではないか。
そう考えるとコロナショックによる人びとの不安を鎮めるためにも、「やってる感」だけで不毛な政策を繰り返す安倍政権から、安全と安心を優先し実りある政策に舵を切る政権への交代が望まれるのである。
(高橋伸彰・立命館大学名誉教授。2020年4月3日号)