新型コロナで「年越し派遣村」を再現させるな
宇都宮健児|2020年5月9日6:09PM
安倍晋三首相は4月7日、新型コロナウイルスの感染が広がっている東京、大阪などの7都府県を対象に、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき緊急事態宣言を発令するとともに、過去最大となる事業規模108兆円の緊急経済対策を実施することを発表した。
政府や東京都などは、これまで大規模イベントの開催自粛要請や全国一律の休校要請、土日の外出自粛要請などを行なってきていたが、それに対する経済的補償は十分には行なってこなかった。
その結果、新型コロナウイルスの感染拡大で資金繰りに苦しむ中小企業が、金融機関から融資を受けるために国の信用保証制度の認定を受けようと自治体の窓口に殺到している。
また、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため政府が集客イベントの自粛を求めた影響で、音楽や演劇の公演中止に追い込まれた関係者から悲鳴が上がっている。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大は雇用情勢にも深刻な影響を及ぼしている。とりわけ、非正規労働者は、もともと不安定な働き方であり、正規労働者以上に雇用を失うことが多くなっている。宿泊施設や旅行業者、飲食店、製造業などで、アルバイトの解雇や派遣労働者の解雇(派遣切り)が激増している。仕事をキャンセルされたり契約解除され収入が途絶えたイベント司会者、演奏家、ピアノ講師、通訳者などのフリーランスも急増している。
派遣切りなどで職を失うと同時に住まいも失う非正規労働者や、収入の減少でアパートやマンションの家賃を支払うのが困難となり住まいを失う恐れがある人が増えてきている。