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新型コロナが招く「経済の政治化」危機
佐々木実|2020年5月10日10:51AM
「コロナ後」の社会を方向付ける目論みも
コロナ経済対策の目玉となるはずの給付金制度に批判が集中したのは、支援対象を絞ったからだ。「選別主義」を批判された政府は、自治体で異なる基準を全国一律(月収10万円以下の単身世帯に給付など)としたものの、給付要件は維持したままで「選別主義」の旗は降ろさない。
リーマン・ショック時のように一律の給付としない理由について、安倍首相は会見で次のように答えている。
「たとえば、私たち国会議員もそうですが、公務員も、いまこの状況でも影響を受けていない。収入には影響を受けていないわけであります。そこにはたして5万円とか10万円の給付をすることはどうなのだという点も考えなければならないのだろうと思います」
顰蹙(ひんしゅく)を買った答弁だが、「選別主義」宣言としては秀逸である。財源4兆円で30万円給付すれば約1300万世帯、全世帯の4分の1程度だ。コロナ不況は業種を問わず広がるから、むしろ不公平感をあおり受給者バッシングを招きかねない。
コロナ経済対策に宿る「選別」の思想は、「コロナ後」にも浸透する。というのも、財政支出の内訳(図)をみれば、「V字回復フェーズ(ローマ数字の3~5)」の比重が意外に大きい。「雇用の維持と事業の継続」の22兆円に対して15兆円だ。
現金給付や制度融資に目を奪われがちだが、コロナ経済対策には感染拡大収束後の「需要喚起と社会変革の推進」が謳われている。「コロナ後」の社会を方向づける経済政策でもあることを忘れてはならない。